心と身体の健康について
再発予防には、心と体の両方を治す必要があります
これまでの精神科・心療内科では、主に心のことだけを見て治療がなされてきましたが、それだけでは疾患を根本から治せるわけではなく、一度症状が良くなってもまた病気を繰り返してしまうケースが少なくありません。そのため最近の精神科・心療内科では、「人間は身体・精神の総体で一人の人間なので、心だけではなく心と体の両方を治すことが必要だ」という考え方が主流となってきました。
心の病気になることで体の症状が出てくることもありますし、反対に体調を崩したり、生活が乱れることで心のバランスを崩してしまうこともあります。
また、薬物療法をすることを考えても、体に栄養が足りていない状態では薬に耐えられないので、体を元気にすることも治療の上で大切なことです。
人間には、どんな病気にかかっても、怪我をしたとしても、「自分の体を元気にしよう」という機構、つまり「自然治癒力」が元々備わっています。
この自然治癒力を高めるには、患者さん自身が「病気を治したい」と思う気持ちが大事です。例えば、怪我をした時も「早く治したい!」と思う事で早く治ることがあります。薬を飲むのはあくまで補助的なものであって、自然治癒力を保つ事こそ、心と体のバランスを取るためには必要です。
「自然治癒力」を高めるため、生活習慣を改善しましょう
もう一つ、自然治癒力を高めるためには生活習慣を改善することも重要です。
人が病気になるのは何らかの原因があるわけですが、その原因を探るためには患者さんがどのような生活を送っているかを把握する必要があります。当院の診察では、患者さんが普段寝る時間や食べているもの、仕事のやり方などを伺い、原因を探します。
本人は良かれと思ってやっていることでも、普通に考えたらおかしなことであることもあります。例えば、体に悪いものを食べてしまったら、「代わりに良いものを摂っておこう」と思えば良いのですが、自分ではまったく体に悪いものを食べているとは、意識していないこともあります。
また、寝る前にスマートフォンを数時間見たり、いじりながら寝るのが習慣になっていて、「寝たのに寝た気がしない」といって受診される方もいます。知らぬ間に常識がずれてしまっている人はたくさんいるので、診察ではそれを一緒に発見していきます。
寝る前のスマートフォンが原因と分かっても「でもスマートフォンを寝る前にやらないと眠れないんです」という人もいます。生活習慣を変えられるのであればすぐに変えてもらうのですが、「変えられない」という人には例えばスマートフォンを寝る前にやらない日を週に何日か作ってもらいます。
しばらく続けないと効果は出ないのですが、「どっちが楽だった?」と聞いて、「やはりスマートフォンを寝る前に使わない日の方が翌朝に体が楽だった」となれば、そこから徐々に生活を改善してもらいます。
仕事で休みが取れなかったり、趣味が出来なかったりと、ストレスの減らし方が分からない人もいます。仕事はせざるを得ないので仕方がないのですが、休みをとって仕事を離れる日を作ったり、自分一人の時間、癒しの時間を意識して作って体をいたわる余裕が持てれば、日常が変わっていきます。
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病気を理解し、悩みを共有する「家族教室」
また、自分の病気がどういう病気か把握することも大事なことです。
例えば、自分が夜眠れなくなる兆候を把握できれば、早期に自分で対処ができます。自分の病気に対する理解があれば、病気はほぼ治っているのと同じなのです。患者さんが自分の病気を理解して、病気と向き合えるようにすることも医師の仕事と考えています。
将来的には、大宮駅前 ひるまこころクリニックで「家族教室」を開くことを考えています。生活習慣の改善は大切なのですが、自分一人では変えられない環境もあります。
病気の治療のために家は休める環境であってほしいのですが、それには家族の理解が不可欠です。家族に病気への理解がないと、腫れ物に触るような態度になってしまったり、反対にプレッシャーをかけてしまうこともあり、患者さんは家に居づらくなってしまいます。
家族も「良かれと思ってやっているのに、なぜこうなってしまうんだろう」と悩んでしまいます。
家族教室は病気に対する家族の理解を深め、患者さんへの接し方を指導するために行います。
また、本来の家族教室というのは複数の家族が交流を持つ場でもあります。同じ病気の人を持つ家族は悩みが共通していることが多いので、家族同士で集めて話すほうが効果的な場合があります。
その他、患者同士のグループワークもやってみたいと思っています。患者同士でなければ共感できないこともありますし、ひとりで苦しむよりは皆で悩んだ方が、苦しみが半分になったり3分の1になったりするものです。